11/28/2014

◆ヴァンジ彫刻庭園美術館 in Shizuoka

現存する彫刻界の巨匠、ジュリアーノ・ヴァンジの作品のみを展示する世界唯一の美術館が静岡県長泉町(クレマチスの丘)にある。ヴァンジはイタリアの具象彫刻家で現在83歳。その作品は、イタリアの豊かな大理石資源を活用した石像は言うに及ばず、木彫、ブロンズ像と幅広い。ヴァンジ彫刻庭園美術館にはそんな彼の主要な作品の多くが所蔵されており、広い庭園を散策しながらそれらをゆっくりと鑑賞できるのだ。我々が訪れた日はあいにくの雨だったが、雨に濡れた彫刻たちは、まるで内部から光を放っているかのように生き生きとしていた。しとしと雨も悪くないのである(これ負け惜しみ)。

彼の彫刻は独特の厚みと重量感ある体幹だけでなく、目や眉毛などに施された象嵌も見所だ。しかし何と言っても、その顔の表情の強さ、深さに釘付けになってしまう。
これは日本の能をイメージして作られた作品。
クレマチスの丘には他にベルナール・ビュフェ美術館もあり、その一画で「長谷川ジェット ストレート、ロックで」が開催されていた。長谷川氏は地元の静岡県長泉町で制作活動している画家なんだとか。元気をもらいたい人におすすめの元気いっぱいの展覧会だった。こちらは来年の1月13日(火)まで。


11/05/2014

◆鉛筆デッサンと書道?

このブログ、あまりに更新しないのですっかり忘れ去られている気もしないではないが、心を入れ替え久々の更新だ。

先週、去る所で鉛筆デッサンの衝撃的な講習を受けたので、今回はそれを紹介したい。書道とは何の関係もないように思えるが、実は深いところで繋がっていた。

デッサンに必要なのは、まずは鉛筆。デッサンのための道具だ。しかしその「道具」が、一筋縄でいくシロモノではなかった。先生曰く、道具とは「道」に「具(そな)える」ためのもので、厳密に言うと文具店で売っている鉛筆は単なる工具で道具ではないんだそうだ。
道とは「道を究める」こと。書道や武道、茶道などのあの「道」だ。

そこで最初に教わったのが、鉛筆をデッサンの「道具」にするための方法だ。ま、要するに鉛筆をカッターナイフで削る方法なんだけどね。先生の教えに従って鉛筆をナイフで削り終え、ようやく我々はデッサンのための「道具」を手に入れることができたのだ。
書道で言えば自分ですった墨は「道具」だが、墨汁は「工具」。この2つの決定的な違いは「具える」という行為をするかどうかなのだそうだ。

そう言えば、ヤンキースのイチローはグローブやバットの手入れを人に任せず自分でするというのをテレビで見たことがある。他の選手は皆専門家に任せるのに、イチローは黙々と自分の「道具」を手入れしていた。その姿は「道を究める」武士のような雰囲気を醸し出していた。

さて道具も整い、いよいよデッサンかと思いきや、次は鉛筆でグレースケールを作るという作業が待っていた。横長の長方形のカラムを15に分け、白から黒までグラデーションにしていくのだ。

↓↓↓上は2Hの鉛筆、下は2Bの鉛筆で作ったグレースケール。
このグレースケールの作成にも、やっぱりいろいろなポイントが詰まっていた。
まずゴールを決め、そのゴールに行き着くための計画を立てる。それをしないでただ順番に色をぬっていくだけではきれいなグラデーションは作れない。つまり、作品を描くときと同じ作業が必要になるのだ。

先生はグレースケールに悪戦苦闘している我々に「その黒はもっと濃くなる、そんなもんじゃないよ」とアドバイスしてくれるのだが、確かにやってみると2Hの鉛筆ですらもっとずっと濃い黒にすることができ、これもまた新鮮な驚きだった。
そして、グレースケールを作成して分かる最後の重要なポイントがこれだ。

ー道具の能力を知るー

道具の能力を知らなければよい作品は描けないのだ。

いやあ~、私、道具の能力を知って書道していたかなあ・・・。
そんなこんなで、いろいろ考えさせられた1日だったのである。